[感想]「贋金と天秤」に感じた舞台の力。金貨をつかみ取る瞬間。






”人生は選択の連続である。”

”就職、進学、恋人選び、今晩のご飯は何じゃろな。”

”人生を変えてしまうような選択からくだらない選択まで、毎日が選択に満ちている。”






2017年、9月30日と10月1日の2日間、

東京、成城学園前駅が最寄りの「アトリエ第Q藝術」において4度公演された舞台「贋金と天秤」冒頭のセリフだ。

1984年というバブル前夜を物語の舞台としたこの作品では、30代後半、今で言う所のアラフォー男子3人がとある選択を巡ってお互い振り回され合う。






とある土地を所有している男、杉浦。

過去に、この土地を譲り受ける約束を受け、夢を目指し金を貯めてきた態度の悪い男、金子。

賢い不動産屋、宍戸は「これからはコンピューターと不動産の時代になる」と予言してその土地を高値で買い取ろうとする。

杉浦は約束よりも大金を取るのか…と金子に問い詰められる。

杉浦には何か考えがあるようだが、その理由を金子には話そうとしない。

宍戸の介入で少しずつ語られていく過去。





杉浦が得意だった数学パズル。N枚の金貨の中から天秤を使って贋金を見つけ出す、「贋金と天秤」。

過去、現在、未来の行動。そのどれが贋金(がんきん)で何が金貨なのか。

杉浦の選択したものとは。彼は金貨を手に入れられるのだろうか?―








この作品の中で誰かの人生を決めてしまう選択、その選び方の一つの解が示される。

それは30年後の未来を生きる私たちにこそ必要なものだった、と感じた。

インターネットが無い時代でもまだまだ人と人はわかり合えてなかったとしたら、

今の時代はもっと人と人がわかり合うことが難しいのではないかとも思う。





TwitterなどのSNSやLINEで気軽につながることができても、

深いところまで話し合う事はなかなか難しい。

ずいぶんリスクを考えることが出来るようになったが、それは恐れや不利益が先に来てしまうということも意味している。

それでも一歩を踏み出し言葉を伝えるという勇気が大事、そんなメッセージをこの舞台からもらえたような気がするのだ。






今回の舞台が公演された会場、「アトリエ第Q藝術」は80年代に建てられ、祖父がアトリエとして使っていた建物を改装したもの。

「贋金と天秤」はこの会場で80年代の物語をやりたい、という事で作られた脚本だという。

設備は近代化されており、快適に舞台を楽しむことが出来た。

特筆すべきはその演者、舞台との一体感だ。

演者の一挙手一投足が間近に感じられる事で感情移入がとてもしやすくなっている。

メッセージ性の高い今回の脚本のような公演ではメッセージや想いを理解する…というより、身体で感じることが出来るのが素晴らしい。






赤野我逸さんが演じる杉浦は心の中でぐるぐるする感情や思考が演技に溢れているし、

堀内保孝さんの宍戸は寂しさから人の良さが出ているような様が妙にキュートで、

進藤キーチさんの金子は輩っぽさと子供っぽさが同居した感じを身体で表現している。

(距離感があったらそういった感想が出て来るほど演者を見れていないとは思う)





その彼らが全力で演じ切って出す答えは、思考で理解するというより、感情に刺さってくる。

たぶんこれこそが舞台の力なのだ。

現場、リアルタイムの目の前で演じるということで伝わりやすくなるものが沢山ある。

そうして受け取ったメッセージが迷っている誰かを救う事もあるはずだ。

私自身にも刺さったし、そのメッセージが必要な友人の事も頭に浮かんできた。

今回の「贋金と天秤」はもっと多くの人に見てもらいたいし、受け取ったメッセージは多分沢山の人に必要なものだと感じた。

是非再演も検討してほしいところ。





心に潤いが少し足りていない方は週末、いや今すぐにでも。

小さい舞台でも、大きい舞台でもいいので少し調べてみるのはいかがだろうか。

舞台を見るということが少なからず心を豊かにしてくれるはずだ。

この記事を見て舞台見てみたい、そう思っていただける方がもしいるようなら、是非感想なりコメントなりいただけると大変嬉しい。




今回見た進藤キーチさんの舞台、とてもオススメだ。


予定が空いたら、一度は観劇に行ってみることをおすすめする。





アトリエ第Q藝術
https://www.seijoatelierq.com/













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